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最高裁判所大法廷 昭和23年(れ)1426号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人両名の弁護人近藤亮太同寺尾元実の上告趣意第三点について。

罰金刑の言渡を受けた者が罰金を完納することができない場合の労役場における留置は、刑の執行に準ずべきものであるから、(旧刑訴五六五條、刑訴五〇五條)留置一日に相應する金銭的換價率は、必ずしも自由な社会における勤労の報酬額と同率に決定されるべきものではない。本件は、いわゆる旧法事件であるからこれに適用されるのは旧刑事訴訟法であるが、同法は、本刑に通算すべき未決勾留一日を金額の一円に見積っているにすぎないのであり(旧刑訴五五六條)、原審が本件につき判決をした直前に制定された新刑事訴訟法においてさえ、本刑に通算すべき未決勾留一日を金額の二〇円に見積るにとゞめているのである(新刑訴四九五條)。されば、原審が被告人両名において罰金を完納することができないときは金二〇円を一日に換算した期間被告人等を労役場に留置すると言渡したことは、基本的人権と法の下における国民の平等を保障した憲法の所論條規に反するものではないから、論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって、旧刑訴四四六條に從い主文の通り判決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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